随分と古いもののようだった。

けれど、恐らく、一生消えることのない痕。


冬眞はじっと黙って、静かな目でわたしを見下ろしていた。

わたしはそれに吸い寄せられるように、一歩、一歩、冬眞に近づく。


目の前に立ったところで、冬眞の手がわたしの手首を掴んだ。

わたしはそれを拒むことはしなかった。


持ち上げられた手のひらが、ゆっくりと、冬眞の胸に当てられる。


そこから伝わるのは、36度の体温と、心地よい、一定のリズム。


トクン、トクンと静かに鳴る、生きている、証の音。



冬眞の心音。




「ねえ、瑚春」


冬眞は、胸に当てたわたしの手の甲を包むように、その上に自分の手を重ねた。


「ここに、何があるかわかる?」


生温い感覚。

手のひらを打つ、小さな響き。



「冬眞の……心臓」



確かに聴こえる、生きている音。

耳ではなく、肌から伝わるその音は、わたしの胸の中と同じリズムで鳴っている。


だけど。