坂道は、上に行くにつれ急になっていく。
そこに必死でしがみ付いている小石を、冬眞の足がこつんと蹴る。
小石は、ころころと先へ転がっていき、だけどある程度のぼったところで勢いを落としてこちらに向かって転がってきた。
それを今度はわたしが蹴る。
さっきよりも速く坂をのぼった小石は、途中で斜めに逸れて、ガードレールの下の雑草の中へと入っていった。
雪が、少しずつ本降りになってくる。
冬眞の吐いた白い息が、落ちてくる粉雪と色を混ぜた。
「俺は、瑚春のことを知らなかった。あの日、あんたを見つけるまで」
それは昨日も聞いた言葉だった。
わたしのことも、両親のことも、ペンダントの本当の持ち主のことも知らないと。
わたしの手を握る冬眞の指先に、少し力が籠もる。
「だけど、俺はずっと、瑚春を探していたんだ」
ずっと。
ひとことだけ、冬眞は繰り返して。
何を言っているのかわからなかった。
だけど答えを求めるように顔を上げても、冬眞はわたしを振り返らない。
ただ暗い夜の空を仰いで、でも、見ているのは、そこじゃないどこかのような気がして。