───どん、と誰かとぶつかった肩が、一瞬だけじくりと痛む。

だけど足を止めず、振り返らず、そのまま先へ進んだ。



人は、誰でも、その人だけの真っ直ぐな道を歩いている。

その道を進む中で、いろんなものを拾って、失くして、止まって、迷って、出会いながら、目的地へ向かう。


わたしの道には、いつでも前に、ハルカが居た。


きっと簡単に進める道じゃなかった、明るく照らされてもいなかった。

けれどきみが先に居たから、恐がることなく前に進めた。


肩をぶつけるほど近くに居た相手でさえ、一瞬の後には区別がつかなくなる縁の薄い世界だけれど。


そんな中で、きみは、わたしと一緒に生まれて、わたしと一緒に、生きてくれた。



ずっと一緒に居たかった。

いつまでも一緒に居たかった。


きみの、きっと素晴らしいであろうずっと先の未来を、わたしは横で、見ていたかった。


きみの泣く姿も、怒る姿も、喜ぶ姿も、笑う姿も。


全部を、隣で、わたしは、見ていたかったんだ。




「……ハルカ……」



ねえ、どうしてきみは、わたしを置いて、消えてしまったの。


わたしには、きみが居なきゃだめなんだって、誰よりもわかっていたくせに。



「……ハルカっ……!」



わたしはどうしようもないよ。


あの日から、確かに時間は進んでいるのに。

わたしは何ひとつ変わっちゃいない。


何も進んでいない。


どこにも向かえていない。



きみの姿をいつまでも、同じ場所を彷徨いながら、探しているんだ。