店を出て、夜に呑み込まれつつある街の中を、ひとり、歩いていた。
帰宅ラッシュの大通りは大勢の人で賑わい、決して広くはない道を常に人が行き交っている。
皆それぞれの目的地を持って、どこかに向かうために歩いている。
わたしもその流れに乗って、どこかへ向かって足を進める。
決して止めずに、止まらずに。
どこまでもただ、歩き続ける。
誰もが、自分のことだけに精一杯な世界だ。
ひとのことなんて構ってられない。
自分が居る場所を守ることだけで精一杯。
自分と、数人の大切な人、それだけが小さな世界をつくっていて、あとはその他大勢の一部。
誰もがそう。
だからこんな大勢の中に居ても、わたしをわたしと認識している人はわたししかいない。
同じだ。
わたしも、どれだけ大勢の人混みの中にいたって、その中にいるのがきみじゃないなら、ひとりでいるのと同じこと。
わたしの世界には、わたしときみしか居なかった。
きみが居れば、それでよかった。
なのにきみが居ないなら、もうきみに会えないなら。
わたしはいつだって、この場所で、たった、ひとり。
いつまでも、ひとりきりなんだ。