───カタッ。

床に商品を落としてしまったことで、ハッと我に返った。

落とした商品を確認して、どこも傷付いていなかったことに安心した。


……だめだな。

集中しなければいけないのに、余計なことに頭を回してしまう。

何かをしていれば楽だなんて言っても、その何かに意識を絞れないなら意味がない。

時間は勝手に過ぎてはくれない。

考えている時間というのは、重くてとても遅く進む。



一度、商品を戻して立ち上がった。

昨日の整理の続きをしようと思っていたけれど、それよりも先に掃除をすることにした。

その方が、何の変化もない作業よりは仕事に集中できる。


奥から布巾とバケツ、モップなど掃除用具をすべて持ってきて入口付近から手を付けていった。

それからはなるべく何も考えずに、作業だけに没頭した。




ひとりのときは、暗い程度が丁度いい。

音楽も必要ない。

自分以外のどんな気配も殺して、徹底的に、ひとりになれるのが楽だ。


ひとりでよかった。


もうきみが居ないのなら。

誰もわたしの側になんて居なくてよかった。


ひとりじゃ何もできないけれど、ひとりで何でもできるんだ。

誰の手もいらない、誰の声もいらない、誰の笑顔もいらない。


だってそれはきみのものじゃなきゃ、わたしには、何の意味もないものだったから。