玄関の脇にある電気を点けて、靴を脱ぐ。
キッチンとワンルームだけの小さな室内。
だけどひとりで生活するには、これで十分な広さだ。
「ちゃんと鍵閉めてね」
「はい」
お邪魔します、と律儀に呟きながら、冬眞は部屋へ上がってきた。
わたしは居間の電気を点けて、荷物とコートをベッドへ投げた。
「綺麗な部屋だな。でもなんか、若い女の子の部屋にしては物が少ない感じ?」
遠慮っていうものを知らないのか、冬眞がきょろきょろと部屋の中を見回している。
「まあ、あんまり物に執着ないから」
「へえ。女の子なのに珍しい」
接待用のソファなんてあるはずもないから、適当にその辺りに座らせて、脱いだコートもその辺りに放らせた。
普段から物を置いていないおかげで、こんな大きな物が増えても邪魔にならないのが幸いだ。
「だから盗まれて困るものもないから、あんたを上げてあげることも出来たってわけ」
「なるほどな。大事なのは、あんた自身だけってわけか」
冬眞が、首を傾げて見上げながら笑う。
わたしはベッドに座りながらそれを見下ろして、彼の笑みに、嘲笑で応えてみせた。
「まさか。わたしが一番、いらないものだよ」