なんだろう、これは。
悪い夢でも見ているのかな。
暗くて、残酷で、だけど必ず覚める夢。
そう、夢だ、こんなもの、ぜんぶ。
早く覚めろ、早くいつもの風景に戻って。
そしたら悪い夢を見たって春霞のところに行って、怖かったでしょって、なぐさめてもらうから。
早く、早く、消えて、こんなもの、ぜんぶ。
……ねえ、なんで、どうして、変だよ。
どうしてこの夢は、覚めて、くれないんだろう。
「……何、言ってんの!!」
どん、と父の体を強く叩いた。
大きくて、頼りにしていた父の体は、けれどあっけないほどに軽く押せて、なんだかとても脆く思えた。
「……ハルカは、まだ、生きてるんでしょ」
「だから、言っただろ、瑚春。春霞はもう……」
「生きてるよ! 心臓は動いてるんでしょ! ハルカは死んでない!!」
死ぬわけがない。
これからだってずっと一緒に居るんだ。
明日は20歳の誕生日、大切な記念の日を、ふたりで一緒に祝うんだ。
おめでとうって言い合って、これからもよろしくって、笑うんだ。
プレゼントだって用意してある。
きっと春霞は喜んでくれる。
こんな風に、くだらなくて、些細な、しあわせな毎日を、これから先もずっとずっと、一緒に歩いていくんだ。