プレゼントにビオラをあげようと決めたときから、地元にある園芸店をいくつも見て回っていた。
花に関する知識なんて欠片も持っていないから良いものを判断することはできないけれど、一番種類が多く鮮やかな花を売っている、大学の近くの店で買うことを決めていた。
まずは、滅多に行かない百貨店に行って時計を手に入れる代わりに痛い出費をする。
それから、同じ百貨店内の少し庶民寄りのゾーンに行って、ラッピング用品などを売っているコーナーで、鉢植えに付けるリボンと小さなメッセージカードを買った。
そして目を付けていた園芸店へ。
ビオラというのは本当にたくさんの色の種類があるらしい。
紫に黄色っていうのが一番よく見る気がするけれど、青っぽいのから臙脂色みたいなのまで、有り難いほどに豊富なバリエーションが揃っている。
だけどわたしはもう、欲しい色は決めていた。
それはずっとずっと前から決めていたもの。
10年以上も前から、春霞に似合う色はこれだと、たくさんの種類の中から選んだものだ。
淡いオレンジのやつと、白にちょっと黄色の入った綺麗なやつ。
そのふたつの苗と、土と、丸みのあるテラコッタの鉢を買った。
ついでにそこにあった自動販売機でホットのミルクティーを買って、近くの公園のベンチで休憩をする。
その時間帯は、小学校がちょうど終わった頃なのか、ちらほらと子どもたちの姿が見えた。
響く甲高い声を聞きながらミルクティーで一服して、ついさっき買ったばかりの苗と土と鉢を出した。
思いのほか、綺麗に植え替えることができた。
園芸店の店員さんにコツを聞いて来たのも正解だったかもしれない。
可愛らしい小さな花は、アースカラーの鉢植えの中で活き活きと鮮やかに咲いていた。
メッセージカードは、素朴な四つ葉柄のものにした。
鞄の中からペンを出して、小さな四角に言葉を添える。
『ハルカ 20歳の誕生日おめでとう。
今年もよろしくね』
最後の一言は、なんだか年賀状みたいだなと思いながら、仕上げに付けた鉢植えのリボンにカードを挟んだ。