名前の知らない細く背の高い植木の向こうに、2階へ続く階段がある。
靴音を響かせながらそこを上がって行く途中、門の前で佇んでいる冬眞の姿が視界に入った。
とん、と右足を上げた状態で足を止める。
「……あんた、何してんの」
「だって、瑚春、一緒に来ていいって言ってないだろ」
捨てられた子犬みたいに見上げながら。
今さら言うのか、そんなことを。
確かに言っていないし、言っていないということをさっき言ったはずだけど。
こんなところまで付いてきてから、そんなことを言うのか。
こんな、もうすでに、家の前まで来ておいて。
こいつ。
「……おいでよ」
それはもう、諦めにも似た呟きだった。
小さい頃は自分から折れることが少なかった分、大人になって、簡単に諦める性格に変わってしまった。
「いいの?」
「まったくもってよくないけど、とりあえずそこにいられると他の人の迷惑になるでしょ。だから早く来い」
「うん、すぐ行く」
なんとも楽しそうに階段を駆け上がってくる姿がむかつく。