たまたま見つけた公園。

小さなジャングルジムの真ん中に、膝を抱えて座っていた。


まだ遅い時間じゃないけれど、冬の空は、すでに夜。

切れかけた街灯は点滅を繰り返して、無駄に不気味な雰囲気を放っている。


虫の声も、鳥の声も聞こえない。

静かな空間に響くのは自分の呼吸の音だけで、なんだかとても怖くなって、できるだけ小さく息を吐いた。

日が落ちた外は死ぬほど寒くて、息はすっかり白く濁る。

寒さと、そうじゃないもので震える体を、自分の小さな手でギュッと抱きしめた。


恐ろしかった。


もう二度と、家には帰れないんだと思った。


わたしはきっとこのまま、この場所で、誰にも気づかれないまま夜に溶けて消えてしまうんだ。


もうあたたかい家には帰れない。

おいしいごはんも食べられない。

学校にも行けない。

友達と遊べない。


春霞にも、会えない。



「……ハルカ」


ごめんね、春霞。

今年の誕生日プレゼントはあげられそうにない。

今年どころかもう二度と、あげられないかもしれないけれど。


ねえ、春霞、ねえ、聞こえる?


わたし、きみに、会いたいよ───




キ、と自転車のブレーキの音。

向かってくる、小さな足音。


夜の闇に響く、聞き慣れた、声。




「こんなところにいたの、コハル」