ビオラの苗とそれを植える鉢を合わせても、お年玉があれば十分に足りる金額だった。

春霞に似合いそうな淡いオレンジのやつと、白にちょっと黄色の入った綺麗なやつを買おう。

植え替えて、鉢にリボンを付けて渡すんだ。

花をあげるのは初めてだからどんな反応をするかわからないけど、春霞のことだから、きっと喜んでくれるはず。


考え出すと楽しみで仕方なかった。

明日が待ち遠しい毎日というのは、歯がゆいけれど、異様なくらいにわくわくした。



そんなわたしに、クラスメイトからとっておきの情報が入ったのは、誕生日の二日前のことだった。


実家が花屋さんをやっている友達が同じクラスにいたため、その子にビオラの育て方についてこっそり相談してみたら、こんなことを教えてくれたのだ。


「ビオラが生えているところがあるよ」


なんと、隣町の隣町に、野生のビオラが群生している場所があるらしい。

広い丘の上で、もちろん私有地だそうだけど、その子によれば野原を荒らさなければ摘んで持って帰ることも可能なんだそうだ。


なんてことだ。

自然に生えているビオラがあるなんて、それを摘むことができるなんて。

それって、園芸店で売ってるお花を買うよりも、なんだか素敵なことじゃないか。

ロマンチックだ。



そういう雰囲気に流されやすいわたしは、早速次の日に花を摘みに行くことを決めた。

その日は土曜日で学校は休み、1日中たっぷりと時間を使うことができる。


幸い朝から青空の広がる小春日和の良い天気だった。

お気に入りのリュックを背負って、買ってもらったばかりの赤いマウンテンバイクに跨り、クラスメイトに聞いた丘までの地図をテープでハンドルに貼り付けた。

準備は万端、さあ、出発だ。