そう思うと、もう目なんて合わせてられなかった。
かじかんで赤くなった手の甲を、春霞の目の代わりに見つめる。
「……ごめんなさい」
「本当だよ。反省してほしいね。携帯も置いて行ってるし、どれだけ心配したと思ってるの」
「……ごめんなさい」
「後先考えずに行動するのやめてほしいね。結局ひとりじゃどうにもできなくなっちゃうんだから」
「……ごめんなさい」
「ほんとに、コハルは」
ひとつ溜め息が降ってきた。
それと一緒にわたしに降りてくるのは、わたしのかじかんだ手のひらとは違う、温かいきみの手。
「だからいつも俺が、コハルを探さなきゃいけなくなる」
くしゃりと笑う顔は、もう怒っている雰囲気なんて欠片もない。
いつもどおりの、困ったようなことを、まるで困ってないみたいに言う春霞の表情。
……ああ、もう、かなわないな。
きみがそうやって甘やかすから、わたしはこんなだめな奴になっちゃったんじゃないか。
わたしがこんなに情けないのはきみのせいだ。
きみのせいでわたしは、ひとりじゃなんにもできなくなっちゃったんだよ。
でも、その代わりに、わたしは。
きみさえ側に居るならば、きっと、なんだってできる。
「……ありがと、ハルカ」
「どういたしまして」
それからどちらともなく手を繋いだ。
安心する、目に見えて繋がっている形。
たぶんわたしたちはお腹の中に居た頃から、羊膜を隔てて、でも、手を繋いでいたに違いないと、なんとなく、思えた。