行く当てもなく、どうしようもなく、とりあえず近くにあった公園の大きな恐竜のオブジェの中に潜んでいた。
こんなところに居たって何ひとつ解決しないけれど、何をどうすれば解決するのかもわからない。
もちろん交番に行けばいいんだろうけど、小さな子どもじゃあるまいし、こんな阿呆臭い理由で迷子になっているだなんて、絶対誰にも知られたくはなかった。
だけどきっと、朝になってもわたしが帰らなかったら、春霞や両親が大慌てで探しに出るに違いない。
近所の人も巻き込んで、そのうち警察にも連絡して、知らない間にとんでもなく大事になっていたりするかもしれない。
ああ、たぶん、先輩にも連絡が行くだろう。
それで別れたことが知られて、わたしが失恋したショックで家出したことがみんなにばれてしまう。
そうなったら最悪だな、もう切腹でもするしかない。
もうやだ。
なんでこんなことに。
いや、ぜんぶ、自業自得だってことはわかってるんだけど。
でも、今日は最悪で最低だ。
先輩にはフラれるし、迷子になるし、お金はないし、お腹すいたし。
「……もうやだ」
抱えた膝に顔を埋める。
どこにも響かない声で呟く。
「……むかえにきてよ」
夜の公園は不気味なくらいに静かだけど、それでもその声はどこにも響かない。
世界中で、きっとわたしにしか聞こえていない声。
「……ハルカ」
ぎゅっと、自分で自分を抱き締めた。
そうじゃなきゃ、夜の闇に全部が溶けて消えてしまいそうだった。
辺りは、とても、静かだった。
「呼んだ? コハル」