ハルカが居ないのなら誰もいらない。
何十億の人の中で、だけどきみが居ないのなら、わたしはいつだってたったひとり。
どこにも行けないままで、子供の姿のまま泣いている。
いつまでもいつまでも、きみの名前だけを呼んでいる。
きみに聞こえるように、何度でも。
だから、いつもみたいに、わたしを見つけて。
泣いているわたしの手を握って、笑ってみせて。
わたしはここに居るよ。
はやく来て、名前を呼んで。
ねえ、なんで、なんで。
なんでわたしを、見つけてくれないの。
ねえ───
「……ハルカ」
掠れた声で呼んだ名前は、どこにも響く前に、冷たい空気の中に溶けた。
だけどその声はきっと、詰まった瓶の蓋と同じだった。
一度外れてしまったそれは、もう、中から溢れるものを止めることなんて出来ない。
「……ハルカ、ハルカ……ハルカ、ハルカ、ハルカ!!!」
ハルカ、聴こえてるんでしょ。
こんなに呼んでるんだもん。
いじわるしてないで、はやくここに来て。
じゃないと、わたし、もう。
きみの居ないこの世界で、どこに行けばいいのか、わからないんだよ。