背中を向けている冬眞から、音は何ひとつ伝わってこない。
表情が見えないせいで、感情も、何も、わたしには、伝わってこない。
わかるわけもない。
そんなものもう必要ない。
もう、何も。
「ねえ、知ってたんでしょ。わたしのこと。頼まれたの? 両親に。ねえ、だからわたしのところに来たんでしょ」
偶然なんかでも、もちろん運命なんかでもなかった。
すべてがわたしの知らないところで、作り出された必然の出会い。
結局冬眞がどこの誰かなんて知りもしないけど、きっと様子を見て来てくれとでも両親に頼まれて来たんだろう。
馬鹿馬鹿しい、くだらない。
そんなこと、冗談じゃない。
お願いだから関わらないで。
わたしに姿を見せないで。
どんな欠片も消えてしまって。
ひとりになったわたしを、ひとりに、して。
「違うよ、瑚春」
耳元で響く声。
冬眞の手が、わたしに触れる。
自分のじゃない温度、誰かが居るしるし。
「俺は、瑚春のことを知らなかった。ほんとだよ。何も知らなかったんだ。
瑚春のことも、瑚春のご両親のことも、それから」
わたしに触れているのと反対の手を、冬眞は自分の胸元に寄せた。
それにつられるように顔を上げると、わたしを見ている冬眞と、目が合った。
「このペンダントの、本当の、持ち主のことも」