「……いらないって……言ってるでしょ!!」


考えるよりも体が動いた。

視界の隅で、弾かれた封筒がゆっくりと床に落ちていくのが見えていた。


吐き気がする、息が苦しい。

なんでこんなに頭が痛いの。

手の甲も痛い、喉の奥も痛い。


だけど、別のところが、それよりも痛い。


「……こんなもの全部いらないんだよっ!!」


テーブルの上も全部乱暴に払い落として、散らばったものを、何度も何度もぐしゃぐしゃに丸めた。

何もかも消えろと願って、だけど消えてはくれなくて。

だったら見えないくらいに小さくなれと、震える手のひらで握り締めた。


こんなものいらない。

見たくもない。

必要ない。


全部、なにもかも、わたしにはいらない───




「……瑚春」


冬眞の呟きが聞こえた。

それが相図みたいだった。

ゆっくりと手を止めて、溜まった唾を呑み込んで、深く呼吸を繰り返す。


痛いくらいに静かだった。

自分の生きている音が、邪魔なくらいの、静けさだ。


「……冬眞は、わたしのこと、知ってたの?」