電車の汽笛の鳴る音がした。

静かだった道を、うるさいエンジン音を上げながら、一台のバイクが通り過ぎて行った。


息を吸って、深く吐き出す。

白く濁る空気に、わたしはちゃんと呼吸をしているんだと、気付く。


ああ、わたしは生きているんだ。

ここに居るんだ。

どこでもない場所に行こうとして、どこに行けばいいかわからなくて。


でも、今、ここに居る。



「……」


いつの間にか立ち止まっていたから、また一歩、踏み出そうとした。

踏み出そうとして、だけど、もう。


足は、進まなかった。


「……ねえ……」


道の途中で、どこでもない場所で。

立ち止まったまま、もう、どうしても、動けなかった。



「……ハルカ……」



寒いな、もう、1月か。

そういえば今日は、何日だっけ。


覚えてないよ、いちいち、日付なんて、考えない。


ねえ、ハルカ、今日は、何日だっけ。



ねえ、ハルカ。


明日は、明後日は、何の日だったっけ。