「なんだかんだで仲良しじゃねえか、お前ら」
「そんなんじゃ……ないですよ」
「まあ、とにかくこれで、俺は安心して旅立てるってわけだな」
その間は任せたぞ、と店長がぽんぽんと頭を叩く。
任せたも何も帰ってくるまで店は開けないから、わたしはほとんどすることがないのに。
「心配ねえか。ひとりじゃねえから」
ひとりでだって心配ない。
いつもそうしてきたんだから。
「仲良くやれよ。喧嘩すんなよ」
するわけないよ、ひとりでやるから。
なんで冬眞も一緒って、勝手に決めつけてるんだろ。
わたしは、ひとりでだって何でもできる。
何もできなかった小さい頃とは違うんだ。
だって、ひとりになってしまったから。
もう二度と、側に居てくれる人に、側に居てはもらえないから。
ひとりでやるしかないじゃない。
ひとりで生きるしかないじゃない。
こんな世界で、誰も手を引いてはくれないから。
わたしは、ひとりで、歩いていくしかないんだから。
「瑚春」
くしゃり、と店長の手が髪を撫でた。
そのままわしゃわしゃと犬でも撫でるみたいにこね回されるから、わたしは為すすべなくじっと自分の膝と床板を見つめたままで。