ころん、と、棚から何かが落ちてきた。

拾い上げると、それは小さな石の付いた華奢なデザインのネックレスだった。


丸く磨かれたその石は、わたしの持っているものとは似ても似つかないほどに綺麗だけれど、不細工な原石を磨いた結果の、ガーネットという名の同じ石。

血のように赤く透明な、わたしの生まれた月の石。


「……」


あれは、なんだったのだろうと。

興味のないつもりでいても、やっぱり、頭をよぎってしまう。


冬眞の胸元にあったわたしと同じペンダント。


いつかハルカの首に在ったはずの、わたしのペンダントのただひとつの片割れ。



似ているだけの違うものだろうかと、一瞬思いはしても、そうじゃないと心が叫ぶ。

だってわたしが間違えるはずもない。

色も形も細かいところまで、すべてが今もこの頭の中に残っている。


ハルカが大切にしていたものを、わたしたちの絆の証であった宝物を。

このわたしが、他のものと間違えることなんて、絶対にないんだ。



───だったら、やっぱり、なんで。


冬眞があれを、持っていたのか。



今もまだ、両親が持っているものと思っていた。

だってそれ以外はありえない、彼らがハルカの持ち物を手放すはずもないから。


だけど、それを、冬眞は持っていた。


冬眞がどうしてペンダントを手に入れたのかは知らないけれど。

もしも両親から直接渡されたのだとしたら。



……もしかして、冬眞は。


わたしを、知っていた?