店に着いた途端、なんだかおかしいことに気が付いた。

それは毎年一度は必ずやって来る異変だったから、何があるのかは、すぐに理解が出来たけど。



「店長、おはようございます」

「おう、瑚春、おはよう」


いつもは出勤したらすぐに開けるブラインドを閉めっぱなしにしたままで声を掛けると、店の中にたくさん置かれた段ボールの向こうから、髭面の店長が顔を出した。

汚い作業エプロン姿は、いつもの人前に出ている姿とはまったく違う。


どうやら今日は定休日らしい。

もちろんわたしはそんなこと、一言も聞いていないけれど。


「……店長、もしかして、またいつもの旅行ですか」

「旅行じゃねえよ。お仕事だっつってんだろ」

「どうでもいいですけど、いつももっと先に言ってって言ってるじゃないですか」

「人生にサプライズは必要だろ?」

「すっごいありがた迷惑なんですけど」

「まあそう言うな」


からからと笑う店長に、わたしはもう何も言えない。

というか、言っても意味がないと分かっているから何も言わないだけだけど。


だってもうこれで五度目。

毎年必ず一回はある、店長の突然の「買い付け」という名の旅行。


前もって言ってくれればいいんだけど、毎度毎度こうして突然店を片付け始めて突然一か月近く居なくなるもんだから、こちらとしては迷惑この上なくて大変困る。

だけど言ったって聞かないし、屁理屈にすらならない言い訳を捏ねられるだけだから、もうわたしがうまく順応していくしかないってわけだ。

つまり諦めている。