冬眞はわたしと目を合わせないまま、ぎゅっと自分の胸元にあるペンダントを握った。
わたしのと同じ、固い感触の不細工な石。
わたしとハルカの、そして冬眞の、誕生石でもある石。
「……まあ、もう、いいや」
短い沈黙の後、わたしの口から出た言葉に、冬眞の視線がつと動く。
わたしは顔にかかった髪を払いながら、またさっきまでのように衣装ケースに向き合った。
「でも……瑚春」
「いいよ、ごめん、やっぱ興味ない」
奥からTシャツとカーデを取り出してすっかり冷えた肌に被せた。
冬眞は何か言いたげにその場に立っていたけれど、そのうちわたしのスウェットを持って、バスルームに戻った。
……興味がないのは、本当だった。
だって、冬眞がどこでペンダントを手に入れたのか訊いたところで、わたしには何の意味もない。
持ち主がいるならそれでいい、無理して取り戻したいわけじゃない。
だって、結局それで何がどうなる?
何かが変わるわけでもない。
ペンダントをこの手に取り戻しても、本当に欲しいものが、戻ってくるわけじゃないんだ。
わたしが欲しいのは、そんなものじゃない。
わたしがいつだって求めているのは、そんなものじゃない。
わたしがこの手に取り戻したいのは、きみのぬくもり。
きみの笑顔。
ハルカの声。
だけど、ペンダントが在ったところで。
ハルカは、二度と、戻っては来ないんだから。