わたしのそれと同じように、ずっとハルカの首から離れず下がっていたガーネット。
だけど、それが初めてハルカから離れたあの日から、わたしはそれが一体何処へ行ったのかを知らなかった。
何かから逃げるように家を出て、それから一度もあの町には行っていないわたしが。
あの日、きっとハルカの首から離れてしまったのであろうペンダントの行方なんて、当たり前のように、知るはずもなかった。
それはわたしたちの宝物で、だからいつかこの手に戻って来ればと、考えてはいても、今はまだ、あの町に、行ける気もしなくて。
どこに在るのだろうと時々思いはしても、探すつもりはきっとなくて。
だって頭のどこかでは、恐らくきちんと両親が保管しているのだろうと、そう思っていたのに。
なのに、なんで、あんたが───
「……瑚春」
掠れた声で、冬眞が呼んだ。
それはいつもと違う響き。
笑ってわたしを呼ぶ声とは違う、何かで覆った、響き。
「冬眞」
呼ぶ声に、冬眞の睫毛が少しだけ揺れた気がした。
見たことの無い表情だった。
わたしの知らない、冬眞の心の奥が、そこにある。
「なんでそれを、あんたが持ってるの」
「それは……」
「それは、ハルカの、ペンダントだよ」
「……」
苦しそうに声を吐き出した冬眞は、小さくその口元を震わせた。
眉を歪め、まるでわたしから逃げるかのように僅かに視線を下げる。
口籠る姿は、動揺しつつも、何かを隠しているみたいで。