「……なん、で……」
頭をがつんと殴られた気がした。
息をするのを忘れた。
視界が不鮮明に滲んで、血のような赤以外、他に何も見えない。
音にならない音が脳みその奥でこだまして響く。
だけどその中で、鮮明にドクンドクンと鳴り響く音。
心臓が強く波打つ。
昨日の夜よりももっと激しく。
どこまでもその音が轟いていくみたいだ。
きっと、止まった世界中に、その音は、聴こえている。
「なん、で……あんたが……」
声はみっともない程に震えていた。
だけどそれを気にする余裕なんて、わたしの心には欠片もなかった。
なんであんたが持っている。
見間違うはずもない。
だってそれはこの世にふたつとない、ただひとつの歪な欠片。
わたしが持っているこの欠片と、その身を分け合った、対を成すべき片割れ。
わたしのもうひとつの宝物。
きみの大事な宝物。
ハルカの、ペンダント。