「…………」


小さく吐いた息は、冬の冷たい空気に混ざる。

それを露出した肌に直接感じながら、衣装ケースの中の冬服を漁った。



「瑚春、パジャマ洗うから、持ってきて」


閉まっていたはずのバスルームへの扉が開いて、そこから冬眞が顔を出す。

服を探していた手を止めたわたしは、キャミソール一枚という下着姿でそいつを見上げる。


「あんたさ、女性が着替え中だよ? ちょっとは気ぃ使おうよ」

「そう思うんならそっちだって、隠すなりなんなり恥らおうよ」


溜め息を吐きたいのはこっちなのに、冬眞がわたしよりも先に呆れたような息を吐く。

だけど、ふいに。

冬眞の視線がある一ヵ所で止まったかと思えば、黒目勝ちの瞳が大きく見開かれていくのがわかった。


どうしたんだと、その様子に驚くわたしよりも、ずっと驚いているような冬眞の視線を追いかける。

その先にあったのは、わたしの、それなりに肌蹴た胸元で。

わたしは今度こそ、盛大な溜め息を吐き出す。



「……あのねえ冬眞、わたしだって怒るときは怒るんだから」

「それ、なんで」



言葉を遮ったのは、少し掠れた冬眞の声。


怪訝に思い見上げると、冬眞は表情を固めたまま、ゆっくりと、右手で自分の胸元に触れた。



「その……ペンダント」



わたしの胸元には、昔ハルカと分け合ったガーネットのペンダントが下がっている。

いつもは隠れているけれど、服を脱いでいる今は、首元で、陽の光を受け煌めいている。



そして、冬眞のパーカの襟元から、誘われるように外に出てきたチェーンの先にも。


同じものが、付いていた。