「 ハルカ 」
ああ、もう、だめだ。
わたしはだめだ。
きみが居ないと、わたしは、だめなんだ。
心が壊れてしまいそうになる。
いつまで経っても、ひとりじゃ前に進めない。
きみが居てくれないと、きみが手を引いてくれないと。
きみが呼んでくれないと、わたしは───
「瑚春」
ぎゅっときつく、体中を包まれた。
全部をくるむ、匂いと温もり。
まるで世界中からわたしを隠すみたいに、いろんなものから、守るみたいに。
冬眞は全身で、わたしを抱き締めていた。
あまりにも突然で、少し驚いて、きつくて苦しくて、だけどどうしようもなく、心地よくて。
「好きなだけ泣いて、瑚春」
「……泣いてない」
「泣いてるよ」
「泣いてないってば」
「泣いてる。泣きたいって叫ぶのが、聞こえるんだ」
わたしの頭のてっぺんに、冬眞が頬を寄せる。
背中に回った両腕は、決してわたしを逃がそうとしない。
自分のじゃない温もり。
他の誰かの、温度。