どっ、どっ、どっ……

耳の裏側で、心臓の鳴る音がする。


秒針よりも速く刻むそれを聞きながら、喉の奥に詰まった息を深く吐いた。

呼吸をするたびにベッドが軋む。

びっしりと掻いた汗に濡れて、髪が首元に張りついた。


ずきん、と左耳が痛む。


無意識に手を伸ばし、慣れない固い感触がそこにあったところで、今日、ピアスを開けたことを思い出した。





「……大丈夫か、瑚春」



ふいに声が聞こえた。

冬眞の声。


ああ、起こしてしまったのか、と案外冷静に思い、顔を上げようとして、だけど、体がどうしても動かない。


心臓の音が、うっとうしくて邪魔だ。



ギシ、とベッドが鳴って、冬眞の手が、ゆっくりとわたしに触れた。

すぐ近くで、自分のと同じシャンプーの匂いがする。


「……瑚春」


冬眞がわたしを呼ぶ。

静かな声で、わたしだけに、聞こえる声で。


ゆっくりと背中を撫でる手のひらの温度が、じんわりと濡れた肌を伝って沁み渡る。

閉じた目の奥がチカチカとする。

乱れた呼吸は、いつまでも、なおらない。



冬眞。


と、応えようとして。

だけど唇から洩れた声は、違う名前を、呼んでいた。