声にならない叫びを上げて、飛び起きた。


カーテンのない窓から差し込む月明かりで、僅かに室内が浮き上がる。

しんと静かな空気の中に、呼吸の音が大きく響いて、夢を見ていたのだと、気付いた。



心臓が鈍く、何度も強く波打っている。

部屋の空気は冷たいのに、体中に滲んだ汗で、服がべたりと肌に張り付く。

息を吸っても吸っても吸い足りない。

吐き気がするような、頭痛がした。



「……っ」


額に手のひらを滑らせると、流れた汗が指先に付いた。

それを毛布で拭って、胸元を手で押さえながら目を瞑る。

できるだけ、ゆっくりと息を吸って、吐き出す。

何度も意識しながら繰り返して、だけどいつまで経っても思うように落ち着かない。

鼓動は強さを増すばかりで、胸に当てた手のひらが、それを直接感じていた。




……あの日の夢を見たのは久しぶりだった。


5年前の、あの日。


きみがわたしの前から居なくなってしまったあの日。


何度も何度もきみの名前を叫んで。

体中が枯れてしまうくらい涙を流して。


それでも誰にも届かなくて、誰も救ってはくれなくて。


わたしの世界は止まって。



涙と笑顔と、きみを失った、あの日。