きみがわたしの前から居なくなってしまうなんて、一度も考えたことはなかった。

生まれてから、いや、生まれる前からずっと、きみはわたしの側に居て、そしてこれから先も、一生側に居るんだと、そう思っていた。



きみが居ることが当たり前だった。


きみが居るから、わたしが居た。



よく歌で謳われるような、居なくなってからその重さを知る、なんて、そんな調子の良いことは思ったことがない。


だってきみが隣に居た頃から、わたしにはそれだけがすべてで、きみがわたしの手を引いてくれたからこそ、わたしは前へ進めていた。

だからわたしはお返しに、悲しいときは涙を見せて欲しかったし、たくさん本気で怒って欲しかったし、世界中の誰よりも笑わせてあげたいと思った。


わたしは馬鹿でグズだから、きっと全部が空回りで、ただの自己満足で、ロクにきみのために何かなんて出来ていなかったんだろう。

だけど、それでもきみは側に居てくれたから。

いつだって、わたしのことを探して見つけてくれたから。

いつまでも、ひとりで前へ進めない臆病なわたしの手を引いてくれたから。


わたしはきみの背中を追いかけて、どこまでも、前を向いて歩いていくことが出来た。




ねえハルカ。


この手を離さないでよ。

もう一回、ちゃんとわたしを見つけてよ。

暗くて何も見えないよ、すごくこわいよ、ひとりは嫌だよ。



『やっぱり、ここに居た』



いつもみたいに、そうやって笑って。


わたしの手を、ぎゅっと握って。



『帰ろ、コハル』



きみの声で、わたしの名前を、呼んで、ほしいのに。