「な、何やってんのあんた! 今言ったとこでしょ、1ヶ月取っちゃだめだって!」
「うん。でもそしたら1ヶ月、このピアス着けらんないでしょ」
こんこん、と冬眞の指先がテーブルを叩く。
そこにあるのは、こいつが買ってきたガーネットのピアス。
これを着けるために、わたしの耳に、開けられた穴。
「1ヶ月後でいいんじゃないの、別に」
「嫌だ、そんなの。せっかく開けたんだから、今すぐ着けたい」
珍しく駄々を捏ねる冬眞に、う、と言葉を詰まらせていると。
冬眞はあっという間に耳からピアスを引っこ抜いて、ガーネットのそれと入れ替えていた。
途中、少し痛みに顔を歪めたように見えたけど、割とすんなり替えられたらしい。
「見て、ほら、瑚春。やっぱりこっちのが綺麗だろ」
鏡を見ながら、嬉しそうにわたしに見せて。
まだ腫れている左耳には、赤黒く光る石がある。
いつか、わたしがハルカと、互いに分け合ったものと同じ石。
「じゃ、瑚春も」
「わ、わたしは1ヶ月後でいいよ。楽しみに取っておく、から」
「だーめ。今替えなきゃ、夕飯ナシだぞ」
「ま、またそれか! 卑怯者!」
「安心しろ。処女膜やぶれたときよりは痛くないって」
「知らないくせに!」
突っぱねて、逃げて、布団にもぐって、だけどやっぱり、最後には流されてしまうんだ。