「ほら、瑚春。鏡見てみろよ」
無理やり向けられる手鏡。
その中に映る不機嫌な顔のわたしと、ふいに目が合う。
それがあまりにもひどい顔だったから、視線から逃げるように耳元に目を向ければ、赤くなった小さな耳たぶに、冬眞のと同じ透明の飾りが着けられていた。
「……処女膜やぶれたときより痛かった」
「そっか。それは俺、わかんないけど」
鈍い痛みは続くけれど、慣れていくのか少しずつ引いていく。
指で触れると、今までそこにはなかった固い感触がした。
体に刻まれた、確かな痕。
「これって、ある程度はつけっぱなっしじゃなきゃいけないんだよね?」
「うん、1ヶ月は」
穴が安定するまでは、入浴時も就寝時もピアスを着けていなければいけないらしい。
おまけに膿んだりしないように、こまめな消毒も必要だそうで。
……なんとも面倒くさい。
「ってことなんで、瑚春」
「ん?」
「今のうちに、取り替えよう」
「は?」
一体何のことだ、と考える余裕もなく。
今着けたばかりのはずのピアスを取り始める冬眞に、こいつは馬鹿かという思いで脳内が支配された。
こいつは、馬鹿だ。