ベッドから引っ張り出した枕をきつく抱き締めて、同じくらいきつく瞼を閉じる。


「動くなよ。動いたら大変なことになるぞ」

「わかってるよ。もう早くして。とっととして」

「はいはい」


呆れたような声のあと、耳たぶに、固い感触が触れるのがわかった。

途端、どくんと心臓が強く打って、溢れだす血液がざわざわと全身を逆流していくような気がした。


「も、もう開けた!?」

「まだだって」


息を吸って、さっき冬眞の耳に穴を開けたときみたいに、呼吸を止めた。


「いくよ、瑚春」



耳元で、声がするのと同時に。

バツンという無慈悲な響きと、感じたことの無い痛みが、脳の奥まで突き刺さる。



「いっ……ったあああああい!!」



ここまで大声を上げたのは、たぶん久しぶりのこと。

随分長く、こうして叫んだりはしていなかったはずだけど、今回ばかりは、声を上げずにはいられなかった。


だってこんな痛み、想像できるわけもない。



「はい、お疲れ様。綺麗に開いたよ」

「い、痛いじゃんか馬鹿!! あんまり痛くないとか言って!」

「だって俺はそんなに痛くなかったから」

「あほ! うそつきぃ!!」


じんじんと、心臓の動きに合わせて痛みが寄せる。


もう、付いてしまった傷。

消えないしるし。

この痛みが、それを確かなものにさせているみたいだ。