「ありえない、絶対やだ!」
「そう言うなって。このピアス、瑚春に似合うんだから」
「絶対やだ! 絶対むり!!」
袋に入っていたのは、2個のピアッサー。
ピアッサーとはもちろん、ピアスの穴を開けるための道具であって。
つまり冬眞は、これで耳に穴を開けて、自分があげたピアスを着けろと言っているわけだ。
どんな横暴。
「このピアスは鞄とかに付けるから! それでもかわいいから!」
「それじゃ駄目だろ。こういうのは身に着けるもんなんだから」
「知るか! 穴開いてないわたしにピアスなんて買ってきたあんたが悪い!」
「いい機会だから開けろよ。お洒落の幅広がるぞ」
「あんただって開いてないくせに! 知ったような口利くな!」
「なんでそんなに嫌がるんだよ。怖いのか?」
「う……」
言葉に詰まった。
つまりまあ、その通りだ。
わたしは怖いんだ、ピアスの穴を開けるのが。
高校生の時、クラスメイトが教室で、友人にピアッサーで穴を開けてもらっていたことがある。
そのときに、失敗したのか知らないけれど大量に耳から出血していて、それを目撃したわたしは、軽く、トラウマに。
「あれは……恐ろしかった……」
「大丈夫だって。普通そんなことにはならねえよ」
「あ、あんたに何がわかる……!」
「じゃあ……よし、こうしよう」
冬眞は少し考えるような素振りをして、それから、こう言った。
「俺も開ける」