入っていたのは、小さな1対のピアスだった。
シルバーの土台に石がひとつ付いただけの、シンプルなデザイン。
最近始めた天然石のコーナー用に、いくつか発注していたアクセサリーのうちのひとつだ。
「……これ」
そのピアスに付いた石は、わたしがいつも服の下に下げているネックレスと同じものだった。
まるで血のように黒く、けれど光を浴びると透明な赤に輝く石。
「ガーネット」
冬眞が呟く。
目を向けると、冬眞はテーブルに頬杖を突き、わたしを見つめて微笑んでいた。
「瑚春の誕生石なんだろ?」
「なんで……知ってんの」
「知らなかったよ。だから俺は、俺の誕生石を買ったんだ」
手の中の赤い石は、1月の誕生石。
いつか冬眞の名前を聞いたとき、こいつも冬に生まれたのかと考えたけど、どうやら当たっていたらしい。
自分も1月生まれなのだと、教えてくれた。
「瑚春が裏に行ってるときにね、こっそり買ったら、店長さんが教えてくれたんだ。ガーネットは瑚春の誕生石だって」
「個人情報漏えい」
「驚いたな、俺、瑚春は春生まれだと思ってたから」
「よく言われるよ」
なんとも季節はずれな名前だから。
そのおかげで、子供の頃は誕生日を知られると何で何でと詰め寄られて、非常に面倒くさかったことを今でも覚えている。
それでも、自分の名前が嫌いじゃなかったのは、もちろん、“春”の名をお揃いで持っている人が居たからで。