「あんことカスタード、どっちがいい?」
問い掛けに、わたしは迷わず「あんこ」と答える。
それから出てきたのは、思ったとおり、出来たてらしいたい焼きだった。
ここにあるたい焼き屋は、近所でもおいしいと評判の店だ。
パリパリで香ばしい皮の中には、甘いあんこがたっぷりと詰まっている。
「まさかこれが、あんたが買いたかったやつじゃないだろうね」
「まさかそんなわけ。これは遅れたおわび。というか、これ買ってたから遅れたんだけど」
「ふうん」
頭から齧る。
頭部のなくなった魚の姿は何気にむごいなと思ったけれど、このほくほくとしたおいしさの前では、そんな感情はすぐに消え去る。
「瑚春は頭からいくのか」
ぼそりと呟きながら、カスタードのたい焼きをしっぽから食べる冬眞を見て、なさけない男だな、と思ったけれど、あんこがおいしかったから口には出さなかった。
「で、欲しいものは買えたの?」
最後の一口を飲み込んでから訊ねると、冬眞はこくりと頷いた。
何を買ったのか気になるけれど、家に帰ってから見せる、とのことだ。
とりあえずは、目的も果たしたし、さっさと帰るしかない。
「あ、でもその前に」
「まだなんかあるわけ?」
「欲しい服があったんだ。あと下着も。ちょっと瑚春、買ってくれない?」
「だまれヒモ野郎」