元々買い物は長い方じゃない。

嫌いなわけではないんだけれど、だらだらと長時間ひとつの店に留まることをしないタイプではある。

さらっと入って、さらっと回って、パッと見ていいなと思ったらちゃちゃっと買ってさっさと出る。

そんな風だから、他人と買い物に来るとどうもペースが合わなくて、いつも大体気疲れだけして終わっていた。

だから今日、冬眞が別行動を取ってくれたことは何気に好都合でもあったんだけど。



「……遅い」


冬眞がなかなか戻って来ない。

後ろに立つ時計を見れば、約束の時間はもう僅かだけど過ぎている。


わたしが集合場所に早く来過ぎてしまったせいもあるけれど。

もう30分も待っている。

わたしが30分早く来てしまったせいもあるけれど。

もう30分も待っている。

遅い。


「……よし」


帰ろう。

と決めたそのときだ。

ふわりと甘い匂いがして、目の前に白い紙袋が浮かんだ。


「おまたせ、瑚春」

「……ほんとに待った。めちゃくちゃ待った」

「うそ。ちょっとしか時間過ぎてないよ」

「わたしが早く来たから」

「それ、俺悪くなくない?」


冬眞は困ったように笑いながら、甘い匂いのする紙袋を開けた。