一番安く売っていたトイレットペーパーを買って、買った途端、この大荷物は最後に買ったほうがよかったんじゃないかと後悔した。
だけど買ってしまったものは仕方ないからと、でかい荷物を抱えたままショッピングモール内をうろうろしていた。
若者向けの店内には、流行りのアパレルショップが並んでいる。
見る場所見る場所、女の子なら皆が目移りしてしまいそうな品が揃っていて、特にどこも、まだまだ続く冬に向けてかアウターが多く置かれていた。
なんとなく立ち寄った店の正面にあった、色とりどりのコートを眺めてみる。
わたしの着ているものと違い最新の流行りのデザインのそれは、当たり前だけど、少しの傷みもほつれもない。
新品の、綺麗でお洒落ないくつもの服。
「…………」
しばらくしたらにこやかな笑顔の店員さんが近付いて来たから、わたしは軽く頭を下げて、その店を出た。
服を見たり、買ったりするのは好きだった。
小さい頃から可愛いもの好きで、特に中学生に上がった頃からはお洒落をするのも大好きになった。
ファッション雑誌をいくつも買って、休みのたびに買い物に出掛けて、気に入った服が買えれば、その日のうちにすぐに家で着てみたりした。
『もう着てるの? コハル』
ハルカが笑いながら見に来るから、わたしはまるでモデルにでもなったみたいにくるりと回って、どうかな、と訊ねるんだ。
そしたらハルカはいつだって、
『うん、似合ってる』
ってわたしに言った。
お洒落が好きだったのは、きっと可愛いからだけじゃなくて、ハルカが褒めてくれるのが嬉しかったからなんだと思う。
だから調子に乗って買い過ぎて、親に怒られてしまっても、ハルカが「似合ってる」って言ってくれるだけで、どんな気持ちもすっきり晴れた。
だけど今はもう、褒めてくれるきみが居ないから。
この季節に着る分厚いコートは、5年間、新しいものには変わっていない。