「何また寝ようとしてんだばか! 起きなさい!」

「うぅ……今日は休みじゃん……もっと寝かせろばか」

「十分寝ただろ。もうゴハンも作っちゃったから、起きないと朝飯抜きだぞ」

「ぐぬぅ……」


確かにいい匂いが漂っている。

昨日の夕飯後から何も食べていない空きっ腹は、その匂いに敏感だ。


「ちくしょう……食べ物で釣るとは卑怯だな……」

「そういうつもりでもなかったんだけどな。ほんとに寝起き悪いな、瑚春」

「ほっとけ」


ずるりとベッドから滑り降りてテーブルの前に座る。

今日の朝ご飯は、フレンチトーストとアロエヨーグルトだった。


まだ起ききらない頭で、掛け布団を肩に乗せたままもそもそとそれを食べていると、先に食べ終わった冬眞が何やらじっとこっちを見ているのに気が付いた。

けれど、また何かめんどくさいことを言いだす予感がしたから、無視しておく。


「なあ、瑚春」


話しかけてきた。

無視。


「なあ瑚春。今日、どっか出掛けない?」


無視。


「無視すんじゃねえよ。泣くぞ」

「そしたら追い出す」

「なあ、買い物に行きたいんだ。連れてってよ」

「お前こそわたしの話を聞けよ」


不毛な朝は過ぎていく。