──とくん、と胸が鳴った。


どんどんどんとゆっくり鼓動が音を強め、体中に轟いていく。


足の指の先から、頭の一番奥のところまで。


熱が上がってくるようだった。

自然に呼吸を止めていた。

じっと、瞬きすらしないで、男の瞳を見つめていた。


「……」


それは、さっきまでの不安に満ちた鼓動とはまた別の鼓動。

当然だけど、ときめいたとかそんな馬鹿みたいなものでもなくて。


でも、ただ、その、名前を。


わたしの、名前を、呼ぶ、その声が。



なんだかとても、懐かしく、て。



『コハル』



そう、なんでだろう。


まったく違うはずなのに。


それでも、どうして。




『ねえ、コハル』





ずっと、呼んでほしいと願っている、



その、声に、似ていて。