春霞の手が、今度はわたしの石を撫でた。
まるで、そこに何かを刻むように、祈るように。
「コハル、これは俺たちの目印にしよう」
「目印?」
「うん。たとえ相手がどんなところに居たって、見つけられるように」
それは繋がりを示す証。
割れた欠片が結ぶ、決して切れない、大切な絆。
「これが結んでくれる。俺とコハルが、どんなときでも、きっと、離れ離れにならないように」
そんなものは、いらないと思った。
だってそんなもの無くたって、わたしたちが離れ離れになることなんて絶対にないんだから。
わたしはきみの側で、きみはわたしの側で、きっとこれからもずっと、ふたりで一緒に生きていく。
決してひとりにならないように。
そのために同じときに生まれた。
そのために寄り添って生まれた。
そのためにわたしたちは、お互いの側で、この世界に、生まれたんだ。
「うん、わかった」
それでも単純に、首から下げられた同じものに言いようのない嬉しさはあった。
春霞と同じものを身に着けていられる、それだけでこのペンダントは一瞬にしてわたしの何よりも大事な宝物になったし、たとえ首をもがれたとしてもこれだけは絶対に離さないでいようと、幼いながら恐ろしい決意までした。