それを春霞がくれたのは、小学校6年生のときの誕生日だった。



わたしたちの誕生日は、元旦を少し過ぎた1月で、つまり子供たちがとある理由からたんまりお金を持っている時期であった。

もちろんわたしたちも例に漏れず、そのときばかりは大金を(子供にとってはだけど)懐に抱えていたわけで。

毎年、その大金をはたいて用意したプレゼントを交換し合うのが、小さな頃からのふたりの誕生日の決まりごとだった。



その年にわたしが春霞に用意したプレゼントは、流行っていたスポーツブランドのなかなかに格好いいバッグだった。

小学生が買うにしては随分高い買い物だったけれど、もうすぐ中学生になるからそのお祝いも兼ねてと、ちょっと奮発してやったのだ。


プレゼント交換は、ふたりの部屋で、と決まっている。

とくにいつ頃、なんて細かく時間を定めているわけではなかったけれど、なんとなくいつも、ふたり同時にものを持って、自分たちの部屋に集まっていた。



わたしは大きな袋を抱えていた。

春霞は小さな箱を手にしていた。


何だこの差は、とすかさず思った。

その小さいのはどういうわけだ、わたしはこんなにでかいものを用意してやったというのに。

何軒ものお店を見て回って、一番格好いいのを選んで、ちょっと出し渋ったけどお年玉をほとんど使って買ったのに。


持っていたプレゼントでしばいてやろうかと思った。

だけどベッドに腰掛けていた春霞が、小さなクリーム色の箱をそっとわたしの手に落とすから、まあ判断するのは中身を見てやってからでも遅くはないかと、とりあえずプレゼントはそのまま手渡すことにした。