写真の中の赤黒い石は、やっぱりどう見たってかわいくは思えない。

かわいく思えなきゃ、もちろん好きとも思えない。

女心は、複雑で単純。


「とくべつってなに? なんかパワー感じるの? うわ、ハルカが変なのにめざめちゃった」

「そうじゃないよ。俺もそういうの信じてないし」

「じゃあなに? 色だってこういうの、べつに好きじゃなかったでしょ」


こんな濃い色よりは、水色とか黄色とか、爽やかな色が好きな奴だった。

石が好きなわけでもなく、赤が好きなわけでもない少年は、いったいこの石のどこに魅せられたのか。



「さあ、俺もよく、わかんないんだけど」


春霞はちょっと首を傾げて困ったように笑う。

そしてぱたんと本を閉じて、何かを考えるように少し間を空けたあと、わたしを見た。



「でも、俺とコハルが生まれた季節の石なんだ。それだけで、俺にはとくべつ」



そうでしょ、と春霞が言って。

なるほどな、とわたしは思った。


なるほどそうか、だったらわたしにもとくべつだ。


きみとわたしが生まれた月に因んだ石。


たとえそれが宝石であろうとガラクタであろうと、不思議なパワーを持っていようとなかろうと。


きみとわたしが一緒に生まれた奇跡みたいな季節のものは。

なんであろうと、とくべつなもの。