「……かわいくない」
第一の感想がそれだった。
わたしは淡いピンクとかオレンジが好きななかなかに乙女な奴だったのだ。
「かわいくはないけど、きれいだと思わない?」
「うーん……んー」
「赤く光ってるの、すごくかっこいいし」
「言われてみればそうだけど、でもダイヤモンドのほうがきれいだしかっこいいよ」
4月の誕生石で紹介されている石。
実物はまだ見たことがなかったけれど、名前なら当たり前のように知っている石だ。
すっごくきれいで、すっごく高くて、金持ちがじゃらじゃら身に着けているもの。
……なんだかものすごく、4月生まれに負けた気分だ。
「そりゃあ、ダイヤモンドは宝石の王様だしね」
「王様かっこいい! よし、わたしの誕生石はダイヤモンドにしよう」
「むちゃ言わないでよ。変えられないよ、こういうのは」
「ええー」
そんな理不尽がまかり通っていいのか。
露骨に顔を歪めるわたしに、春霞は小さく笑ってみせた。
「でもさ、俺はやっぱりこの石が、なんだかとくべつに思えるんだよね」
春霞の小さな手が、写真の赤い石を軽く撫でる。
わたしは顔を歪めたまま、つられて視線を向けた。