それからは、無茶をすることはなるべくやめた。
ガキ大将もケンカを売ってくることがなくなったから、別に意識しなくても無茶なんてしなくなったんだけど。
それでも、春霞を困らせることはやめようと思った。
だってどんなことをしたって結局わたしは泣いちゃうみたいで。
それは自分が泣いちゃうようなことをしてるのがいけないんだと気付いたわけで。
だったら最初からそんなことをしなきゃいいんだと、生まれて9年でようやく気付いた。
だからって、わたしの泣き虫が治るわけもなく。
そのあとも何かにつけてしょっちゅう泣いてしまうんだけども。
そのたびに春霞は隣で笑って、わたしに寄り添っていてくれるんだ。
「好きなだけ泣いていいよ、コハル」
まだまだ小さな手でわたしの頭を撫でて。
必死で我慢しているわたしは、まるで魔法みたいなその手のせいで、いつも大声を上げて泣いていた。
それは、春霞のもみじみたいな手が、わたしのそれよりもずっと大きくなるまで続いて。
魔法はいつまでも解けなくて、小さなぬくもりも、いつまでも、変わることはなかった。
そうか、春霞がそうやってわたしを甘やかすからいけないんだ、ってあるとき気付いて、もうなでなでするなって怒ったことがある。
そしたら春霞はいつもみたいに困ったように笑って。
「でも、コハルが泣きたいって叫ぶのが、聞こえるんだよ」
そう言っていた。