体を起こして、涙を隠すようにぎゅっと春霞にしがみついた。
背中に春霞の腕が回って、ぽんぽんと軽く叩かれる感触がする。
「痛かったでしょ」
「うん」
「怖かったりもした?」
「あんまり」
「せっかくケガ治ったのに」
「またケガしちゃった」
「女の子が顔にキズつくっちゃいけないって、お母さん言ってたよ」
「つくる予定はなかった」
「仕方ないなあ、コハルは」
春霞の手が、頭を撫でる。
わたしは強く唇を噛んで、春霞の服を握っていた。
だけど、我慢しても我慢しても、涙は溢れるし、唇の隙間からは嗚咽が漏れる。
春霞がひとつ撫でるたび、まるでそれが合図みたいに、わたしの泣き声は大きくなる。
擦りむいた顔は焼けるみたいに痛かった。
塩辛い涙が沁みて、また余計にじんじんする。
「コハル、もう二度と、こんなことしない?」
「……っ……しな、い……」
「ケンカ売らないし、買わないし、かたき討ちもしないし、あぶないこともしない?」
「……もう……ぜったい……しないっ……!」
「そっか。じゃあ、帰ろう」
顔を上げると、わたしと色違いのTシャツに涙のしみができていた。
もっと上げると、そこには春霞の顔があって、春霞はわたしと目を合わせて笑うと、手のひらでごしごしと涙を拭ってくれた。