「そろそろ来るころだと思ってた。係りの仕事、おわった?」
「なにしてんのって、きいてんだけど」
「わたし、ガキ大将に勝ったよ。みんなにもほめられた。すごいって」
あんなに褒めちぎられたのは初めてだ。
今まで大したことをやってこなかったわたしが、みんなに絶賛されたんだよ。
強くなったでしょう、わたし。
もう弱くないよ、泣いたりしないよ。
ほめてよ、ハルカ。
笑ってよ、ハルカ。
すごいなコハルって、言ってみせて。
「バカだな、コハル」
春霞は笑った。
だけどそれは、わたしが思っていた顔とちょっと違った。
春霞の小さな手がわたしに伸びて、おでこの前髪をかき分けながら、そっと撫でた。
瞬間視界がぶわっと滲む。
急いで瞼をつぶったけれど、涙はそこから溢れて零れる。
「……うぅ……」
ああ、だめだ、やっぱり。
わたしは強くなんてなれない。
泣いてしまうんだ、痛いんだ、悲しいんだ。
「好きなだけ泣いていいよ、コハル」
きみが側に来ると、どうしても、溢れちゃうんだよ。