大失敗だった。
高く飛んで着地しなければいけないところを、わたしはおもいっきり顔から地面に滑り込んでしまった。
だけど、勝負には勝った。
ただでさえ尻込んでいたガキ大将は、血まみれになったわたしの顔を見てより怖気づいてしまったらしい。
倒れ込んだ視界の向こうで、ランドセルを持って急いで逃げる背中が見えた。
わたしは大技に失敗した。
だけどそれに挑戦した心意気が素晴らしかったのか、ギャラリー全員に盛大な拍手を贈ってもらった。
ガキ大将に勝った、英雄になった。
それだけで、顔の痛みも気にならないくらい、言いようもなく、誇らしかった。
暗くなってきたこともあって、そのうち集まっていたギャラリーたちは次々と下校していった。
わたしは、まわりに誰もいなくなった後も、まだしばらくその場で倒れ込んでいた。
怪我したのは顔だけだから、別に動けないわけではない。
ただ、なんとなく、今は動きたくなかった。
擦りむいた顔の傷が、少しひりひりし始めた。
「なにしてんの、コハル」
足音がして、目だけ向けると、案の定そこには春霞が立っていた。
呆れた顔でわたしを見下ろしている。