さすがに自分から鉄棒対決なんて提示してきただけあって、ガキ大将もなかなかの腕前だった。
デカい体でよくもまああそこまで出来るもんだと、その場にいた全員が思っていただろう。
わたしもガキ大将も一歩も譲らなかった。
勝負は長くなるかもしれないと、わたしたちは互いに感じていた。
だけど、ギャラリーの中から飛んできたひとつの声で、勝負は大きく動くことになる。
どこからかその技が聞こえた瞬間、騒々しかった空間は一気にしんと静まり返った。
それは、とんでもなく危険な大技だった。
それに挑戦する小学生たちにあまりに怪我人が続出したため、隣の学校では校長直々に禁止令を出したほどだ。
そんなものに、挑めるはずがない。
さすがのガキ大将ですら、尻込みして鉄棒に手を掛けられないでいる。
だけど、わたしは違った。
鉄棒に手を掛け、腕の力だけで飛び上がると、一気にギャラリーから歓声が沸いた。
後ろでガキ大将が、息を呑みながら見ているのがわかる。
わたしはそいつに目をやらずに、深くひとつ呼吸をした。
そして足を高く上げて、勢いをつけて何度も回って。
暮れかけた赤い空に、軽い体を、飛ばした。