怪我は、案外早く治った。

右ひじの擦り傷だけ、池からのばい菌が入ったみたいでお医者さんに看てもらったけど、もともとがバカみたいな健康体だっただけあって、いつの間にか痕も残らず消えてしまった。


だけどその代わり、わたしはおでこと鼻の頭に、新たな擦り傷を作っていた。


例のガキ大将と再びの決闘をしたときに、つくってしまった傷だった。


だけど今回は殴り合いをしたわけじゃない。

鉄棒対決をしたのだ。




ガキ大将は最初の決闘に勝ったにも関わらず、わたしに股間を蹴りあげられたことを根に持っていたらしい。

前の傷がちょうど消えてしまったくらいに、学校の授業が終わったわたしを呼び出した。



今度の決闘の場は学校の運動場で、噂を聞きつけて集まったのか、無駄にギャラリーも大勢いた。


ルールは、そのギャラリーたちが言う技に、わたしとガキ大将がそれぞれ挑戦し、出来なかった方が負けという単純なものだ。

よくもまあ年下の女の子にそんな闘いを申し込んだものだと思うけど、ガキ大将はとにかく自分が勝てればよしという心底バカなガキだった。

だけど、わたしにとってはここで再びそいつのバカさが好都合なときがやって来た。


わたしは、鉄棒が何よりも得意だったのだ。