惨敗だった。


当たり前、人数もまったく違ければ、そもそも学年も違う相手だ。

それなりに運動には自信があったけれど、最初から勝てるはずのない決闘だった。


わたしは子分共数人とガキ大将本人の股間を蹴りあげ悶絶させてやったけれど、最終的にはぼこぼこにされて春霞と同様、軽々と池に投げ込まれた。


すっかりオレンジに染まった夕暮れ時、相手もそこそこに満身創痍だったのか、内股になりながら帰って行ったけれど。

わたしはひとり浅い池に立ちすくみながら、じっと何かを堪えるように唇を噛んでいた。



───悔しい。


なんで負けてしまったんだろう。

勝てるはずのない決闘だった、でもそのときは、負けるなんて思うはずもなかった。


春霞の仇を取るはずだった。

春霞をいじめた奴が許せなかった。


春霞に辛い思いをさせる奴なんて、ひとり残らず泣くまでぼこぼこにしてやりたかった。


なのに。




「コハル」



気付けば、目の前に春霞が居た。


池の縁にしゃがんで、笑いながら、わたしに手を伸ばしている。


「ごめん、タオルを持ってくるの、忘れた」