二卵性ではあっても、さすがに血の繋がった姉弟だけあって、顔はそこそこ似通っていた。

特に小さい頃は一卵性と間違われるくらいにそっくりで、母はわたしと春霞の服を入れ替えて、おむつ替えをしようとした父を驚かせるといういたずらをよくやっていたらしい。


「ちんちんが無い!」


もしくは「ちんちんが生えてる!」という叫び声がよくわたしの家からしていたと、小学生のときに近所のおばさんから聞いた。

そんなわけで父親すら騙せるほどにそっくりだったわたしたちは、けれど幼稚園に入園したあたりからはさすがに顔つきの違いも出始め、おまけにまったく違う性格の持ち主へと成長しつつあった。



よく言われたことがある。


「春霞くんのほうが、お兄ちゃんだと思ってた」


姉のわたしとしては甚だ不愉快な勘違いではあるけども、言い返すことを一度としてしなかったのは、言い返せないだけの事実がそこにあったからだ。

甘えん坊で怒りっぽくてわがままで泣き虫で人見知りなわたしと違い、春霞は大層お行儀よくて礼儀正しくて愛想の良いしっかり者であった。


正反対のわたしたち。


だけどわたしたちは、決してお互いを羨んだり妬んだり蔑んだりすることはなかった。


だってわたしたちはふたりでひとつ。

半分ずつのわたしたちが、ふたり集まればようやくひとつ。


ふたりは違って当たり前。

わたしはわたしで春霞は春霞。

わたしは春霞、春霞はわたし。


わたしたちは、ふたりでひとつだったんだ。